ドミニオンの日々(はてなブログ)

カードゲーム「ドミニオン」について

自己言及するカード その2 後から追加された「同時処理」について

先に、以前書いたこちらのエントリを読んでいただけると幸いです。

hirotashi-domi.hatenablog.com

 


さて、これらとはまた異なる、新たな自己言及カードについて考えてみます。
こんなことは可能でしょうか。

 

あるカードを獲得したとき、そのカードが持つ効果「このカードが場にある間~」を、自身の獲得に対して処理する。

 

例えば玉璽(5)をプレイし、これ(玉璽A)が場にある間にサプライからもう1枚の玉璽(玉璽B)を購入したとき、「場にある間~」という効果によりその玉璽Bを山札の上に置くことができますが、これは同名の別のカードを対象としているだけであり、自身に対しての処理というわけではありません。


これを解決するのが、新拡張Renessanseで登場したProjectのひとつ、Innovation(6)です。

 

 

http://wiki.dominionstrategy.com/images/thumb/f/f3/Innovation.jpg/320px-Innovation.jpg


さて、Innovationが購入済みで、かつ相続(7)を購入しており、その対象が庭師(5)だったとします。ここで屋敷を獲得したとき、Innovationの効果によってすぐにその屋敷をプレイ可能です。
この屋敷は「このカードが場に出ているかぎり、あなたが勝利点カード1枚を獲得するとき、+1勝利点トークン」という効果を持っており、実際いままさに屋敷を獲得したわけですが、さて勝利点トークンはもらえるんでしょうか。屋敷の購入をした瞬間には場に(庭師の効果を持った)屋敷はなかったわけですから、これは後追いで追加された効果と言えますが、さてこの「後から追加された効果」は認められるんでしょうか。

ドナルドによれば、これは認められるそうです。

 

This is correct.

Groundskeeper, Inheritance and Innovation

 

このスレッドにはこれ以上の解説がないため、その理由については推測するしかありません。そこで、以下のようなことを考えてみました。

 

  1. 手札が銅貨4枚と望楼(3)1枚であるとき、銅貨4枚をプレイして恵みの村(4)を購入、獲得時効果で海の恵みを得て山札を1枚引き、望楼を公開して獲得した恵みの村を山札の上に置いた。
  2. 手札が銅貨5枚であるとき、このうち4枚をプレイして恵みの村を購入、獲得時効果で海の恵みを得て山札を1枚引いたところこれが望楼だったので、この望楼を公開して獲得した恵みの村を山札の上に置いた。
  3. 手札が銅貨5枚であるとき、この5枚をプレイして恵みの村を購入、獲得時効果で海の恵みを得て山札を1枚引いたところこれが望楼だったので、この望楼を公開して獲得した恵みの村を山札の上に置いた。

 

まず1.については特に問題ないと思われます。獲得時効果である「祝福を得る」と「望楼を公開する」が同時に発生するため、好きな順で処理しただけです。
一方2.は、本来獲得時には手札に望楼はありませんでしたが、他から見ると(1)と見分けがつきません。今引いたカードか元から持っていたカードかを明らかにする必要がないため、1.が認められるなら2.も認められるでしょう。
そして3.です。こちらは恵みの村獲得時に手札が0枚のため、望楼を後から引いてきたことは明白です。ですが、しかし処理としては2.と同じことであり、どちらも同時処理を好きな順で処理したに過ぎません。
そう、つまり「獲得時」というタイミングは、その獲得時にやることがなくなるまでずっと続く、と考えれば納得がいくのです。「獲得時」という言葉から何か瞬間的なものを想像してしまいがちですが、実際にはけっこう長い間だったりするのです。

 

屋敷獲得時には場になかった屋敷も、恵みの村獲得時には手札になかった望楼も、どちらも明らかに後から追加されたものですが、効果を処理するべき「獲得時」というタイミングには間に合う、ということのようです。

 

(追記:その後のルール改定(2019ルール)により、相続の効果は変更され、庭師の「場にあるとき~」という条件を満たさなくなるため、VPトークンは得られなくなりました。そのため上の議論は意味のないものとなってしまいました。)

(追記:さらにその後のルール改定(2022エラッタ)により、庭師の効果は「場にあるとき~」ではなく、プレイ時の効果となりました。そのため場に庭師がなくとも効果は有効となり、上の議論に再び意味が生まれました。)