ドミニオンの日々(はてなブログ)

カードゲーム「ドミニオン」について

あなたの屋敷があの人の屋敷になったら


https://twitter.com/engirebn/status/994614907910803456

このエンジさん(@engirebn)のツイートで初めて気づいたことです。

先日の「自己言及するカード(http://d.hatena.ne.jp/hirotashi-domi/20180509)」でも書いたように、現在のドミニオンでは、うまくやればプレイの途中でプレイされたカードが場から離れ、その後いろんなところに移動します。うまく手札に入れば自己言及、つまり「自身を自身でプレイ」することもできるわけですが、この時大使(3)を使って対戦相手の捨て札に送ることもできるわけです。


上にあるように、冠(5)*1を相続(7)してから、玉座の間(4)の対象に屋敷を選択し、屋敷の1回目のプレイで伝令官(4)をプレイ。その1回目のプレイで公開された工房系のカード(例えば大学(2ポ)など)で官吏(5)を獲得し、その獲得時効果で場にある財宝カードが山札の上に戻ります。ここで屋敷は財宝カードでもあるためその対象となり、伝令官の2度目のプレイでその屋敷を引き、公開された大使でその屋敷を対戦相手に渡せば完了です。屋敷の2度目のプレイ時、すでにその屋敷は「あなたの屋敷」ではなくなっているわけですが、このとき対戦相手もまた別のカードを相続していればその能力を持つ、とステドミ*2で裁定されているということです。


これについて、まじぽにさん(@majiponi)はDominion Strategy Forum*3で取り上げ、ルール質問のカテゴリにスレッドを立て、これに付随するもうひとつの問題を挙げました。

And more, I've noticed another problem. If I have another Estate in my hand, we cannot tell which Estate I played (on dominion.games). Did I play the returned Estate? I mean, do I play Estate as Crown, or play Estate as "solid Estate" (so I fail to play it again)? (Maybe too complicated question...)

もし手札にもうひとつ屋敷を持っていたとしても、いまプレイした方の屋敷がどちらかを示すことができない。冠としての屋敷をプレイするのか、あるいは「ただの屋敷」をプレイするのか(そしてプレイに失敗するのか)?

http://forum.dominionstrategy.com/index.php?topic=18598.0


これまでドミニオンにおいて、2枚の同名のカードはいずれも「同じカード」と扱われて区別されず、そのカード1枚が固有の要素を持つことはありませんでした。特に手札にある2枚の同名カードはどちらがどちらかを判定することが他のプレイヤーにはできず、その必要もありませんでした。
しかし相続の誕生によって「あなたの」という概念が生まれ、そして様々な方法でプレイの最中でカードは場から動くようになりました。結果、プレイの最中に「あなたの屋敷があなたの屋敷でなくなる」という事象の発生が可能となってしまったのです。



このお二人に便乗する形でさらに問題を挙げるなら、このプレイの最初が「玉座+屋敷」ではなく「玉座+屋敷+屋敷」だったとして、官吏の獲得時に2枚の屋敷が山札の上に戻り、その後その2枚を手札に引き(伝令官に+1カードトークンが乗っていた、などの方法で)、大使でその2枚をサプライに戻したとします。
そしてこのゲームが3人戦で、対戦相手の2人とも別のカードを相続していたとしたら。サプライに戻された2枚の屋敷は2人の対戦相手がそれぞれ1枚ずつ獲得するわけですが、では次にプレイされる屋敷は2人のどちらが相続したカードとして処理すべきなのでしょうか。ステドミではどう処理されるのでしょうか。2枚の屋敷を戻す順序を決めることで狙ったプレイをすることは可能なのでしょうか。



このスレッド上でのドナルドの回答がこちら。

The behavior is correct, and you are correct about the other problem.

その処理は正しいし、もう一つの問題についてもあなたが正しい。

There are two classes of solutions: changing the lose-track rules to lose track harder, and changing Inheritance.

解決の方法は2つ。「消息不明ルール」より強いものに変えるか、相続を変えるか。


The lose-track change would change Throne / Feast in the original main set; I'm not doing it. People don't know the lose track rule, and the main set rulebook said Throne / Feast worked. For new games this would be a thing to consider; Dominion does not want to mess with that.

「消息不明ルールの変更」は最初の基本セットの玉座の間+祝宴を変えることになるだろう(訳注:「あなたのカード」でなくなったら効果を失うとした場合、祝宴を廃棄した時点で効果を失うため、2回目のカード獲得はできなくなる、という意味のことを指していると思われる)。私はそうはしない。みな消息不明ルールは知らないし、基本セットのルールブックにも玉座の間+祝宴は効力があると書いてある。新たなゲームのためにこれは考慮すべきだ。これによって混乱を生みたくはない。

The only possible (heavy errata) fix I see for Inheritance is the "during your turn" that Bridge etc. use - all copies everywhere change. Inheritance breaks an important rule, that all copies of a card should be identical, and this convoluted combo exploits that. Inheritance originally said "during your turn"; the problem is that you get super-weird stuff immediately, with trivial rather than convoluted combos. For example I inherit Caravan Guard and play an attack; you respond with Estate because it's Caravan Guard. But on your turn the Estate is in play and has no abilities, or is some other card that you inherited. The rules handle it, but it's super-confusing.

相続に「あなたのターンの間」という条件を加えるエラッタを施し、場所を問わないと変更する可能性がある。相続は重要なルールである「同名のカードは同一である」を破っており、この複雑なコンボを悪用する。
オリジナル版の相続には「あなたのターンの間」があったが、すぐに奇妙な問題が発生する。例えば、私が隊商の護衛を相続し、アタックカードをプレイしたとき、あなたは屋敷をプレイできるだろう(それは隊商の護衛だから)。しかしあなたのターン中、場にある屋敷は効果を持たないか、あるいはあなたが相続しているカードとなる。これはとても混乱するだろう。

Feel free to simply not play with Inheritance. That actually solves the problem.

相続のあるゲームをプレイしないこと。これで問題は解決される。


In my defense, Inheritance was a lot of fun. Today I would have you do the effect without Estate changing, e.g. you can discard Estate to play the set-aside card, leaving it there, and it's limited to non-durations (like Necromancer). That gives you "my Estates do this thing" but cuts out things like "they are Actions for Herald." And the Estates are always just Estates so so much for that. It's a poor fit for Adventures, since there are lots of Durations and also Reserve cards, which are useless here. It could have been in Empires though. Anyway we wouldn't use errata to effectively make Inheritance some other related thing.

弁明だが、相続はとても楽しいものだった。ただちに、屋敷を変更することなく効果を持たせられるだろう。例えば屋敷を捨てて脇に置いたカードをプレイし、またそこに戻る(Necromancerのように)、ただしそれは持続カードでないという制限をつける、など。これによって「わたしの屋敷は効果を持つ」ことはできるものの、伝令官にとって「それらはアクションカードである」という点は除かれる(訳注:伝令官で屋敷を公開したときにプレイできなくなる、という意味の事と思われる)。屋敷は常に単なる屋敷でしかなくなる。持続カードの数も多く、リザーブカードもある冒険では役に立たず、適していない。帝国に置くべきだったかもしれないが、とにかく、相続を効果的にするためにエラッタは使用しない。

この後もスレッドは続きますが、結論として「その処理は正しい」というドナルドの言葉が出てしまった後は、ではこれをどのような方法で起こらないようにすべきか?という議論にシフトしていきます。「官吏が悪さをしていることは明白だ」などと認めながら、ドナルドはこう書きました。

but I think it's better to just play the set-aside card as suggested.

しかし、提案されたように、脇に置いたカードをプレイする方が良いと思う。

つまり相続は、屋敷を場にプレイするのではなく、屋敷を捨てる代わりに脇に置いた(屋敷トークンが置かれた)カードを場にプレイし、すぐに場から元に戻すと変更した方がよいという考えを明らかにしたのです。これはつまりルール変更を仄めかしているのですが、ではそれはいつなのか。冒険の次の版では変更するという意味なのか。
少なくともその日が来るまで、我々は「この屋敷は誰の屋敷なのか」に悩みながらドミニオンをプレイする必要があるようです。

(その後のルール改定(2019ルール)により、相続の効果が変更され、上記について明確化されました。)

*1:エンジさんは王冠(Diadem)と書かれていますが、おそらくは冠(Crown)の事だと思われます

*2:https://dominion.games/

*3:http://forum.dominionstrategy.com/index.php