ドミニオンの日々(はてなブログ)

カードゲーム「ドミニオン」について

陰謀第二版考察 その1 外交官と踊ろう

なんだかかなり長い間待っていたような気がしますが、ドミニオン陰謀の第二版がまもなく発売となります。

https://www.amazon.co.jp/%E3%83%9B%E3%83%93%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%91%E3%83%B3-HobbyJAPAN-%E3%83%89%E3%83%9F%E3%83%8B%E3%82%AA%E3%83%B3-%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E%E7%89%88/dp/B07VDRFLFN

 


既にホビージャパンのツイートにより新カード7種の和名は明らかに。

対訳

Lurker 待ち伏せ
Diplomat 外交官
Mill 風車
Secret Passage 隠し通路
Courtier 廷臣
Replace 身代わり
Patrol トロール

 

その効果についてはこちらを参照ください。

hirotashi-domi.hatenablog.com

 

 

さて今回はこの中から、かなりのテクニカルカード、外交官(4)について考えてみます。

 

http://wiki.dominionstrategy.com/images/thumb/8/85/Diplomat.jpg/200px-Diplomat.jpg

外交官
アクション リアクション コスト4


+2カード
手札が(ドロー後に)5枚以下であれば、+2アクション。
===
他のプレイヤーがアタックカードをプレイしたとき、5枚以上ある手札からこのカードを公開すれば、山札を2枚引き、手札を3枚捨てる。

 

 


2枚引いてからの手札が5枚以下ということは、外交官を打つ前の手札が4枚以下であるということ。そうでなければ堀(2)のような単なる2ドローするだけのカードです。普通にプレイしていれば当然手札は5枚からスタート。ここから何らかのことをして、アクションを減らさずに手札を減らすには。
つまり「+1アクション」以上を持ち、かつドローをしない・またはドローした分だけ手札を減らせるようなアクションカードがあればいいわけです。灯台(2)でも、オアシス(3)でも、改良(5)でも、変容(4)でも。なんなら共同墓地(0)や廃村(0)だっていいです。そうして手札が4枚になったら外交官を打ち、手札5枚・残りアクション2の状態に。ここから「手札が減るアクションカード」をまた打って手札4枚・残りアクション1となり、再び外交官を打つ・・・を繰り返すことを考えます。

例:

プレイするカード 手札枚数 残りアクション数
(ターン開始時) 5 1
灯台 4 1
外交官 5 2
執事(+2金) 4 1
外交官 5 2
詐欺師 4 1
外交官 5 2
   
 

 

こうして、外交官とそのパートナーとなるカードを交互に打つことで、手札枚数は4枚と5枚の間を行ったり来たりします。村(3)と鍛冶屋(4)を用いるような手札がどんどん増えていくタイプのコンボとは違い、外交官によってゆらゆらと揺れるような、ゆったりとしたコンボが実現します。
この外交官ダンスの「パートナー」であるカード、単なるターミナルシルバーであればいいのですが、せっかくなら重ね掛けすればするほど強くなるようなものを選びたいものです。橋(4)を集めてのビッグブリッジでも、ならず者(6)によるグレバイでも。またそこまで派手でなくても、コンボをつなげるための準備として圧縮が必要となるため、同じ拡張にある執事(3)はその圧縮が終わった後でも良きパートナーとなれる点で有用です。


さて、このダンスを始めるためには。つまり手札を4枚にするためにはどうしたらいいでしょうか。
そう思いながらこの陰謀第二版のカードを眺めてみると、ここのはその条件「アクション減らさずに手札を減らす」カード(「スターター」と呼ぶ)が多く含まれていることに気付くのです。

 

  • 手先(2) (+1アクションと、+1購入か+1金を選択)
  • 待ち伏せ(2)
  • 貧民街(3)
  • 鉄工所(4) (勝利点でない、アクションカードを獲得)
  • 風車(4) (2枚捨てる)
  • 寵臣(5)
  • 改良(5)
  • 廷臣(5) (外交官を公開し、+1アクションと何かもうひとつを選択)
  • 貴族(6) (+2アクション)

 

これ以外にも、もちろん外交官自身のリアクション効果により手札4枚にすることでも、あるいは最近の拡張なら、愚者(3)で得た森の迷子により1枚捨てることでも(ただし海の恵みめくれると失敗)、Cathedral(3)によって1枚廃棄する事でもダンスの準備は可能です。

そしてパートナー候補である、手札が増えないアクションカードは何があるでしょうか。上のスターターはすべてこの条件を満たすので、これら以外で挙げると、以下の通りです。

  • 執事(3)
  • 詐欺師(3)
  • 橋(4)
  • 交易場(5)
  • 身代わり(5)

 

さて、「手札枚数4枚と5枚の間を往復する」というこの動き、考えると呪いの村(5)によるコンボによく似ています。こちらは呪いの村と何かを交互に打つことで5枚と6枚の間を往復します。理屈は同じなので相性のいい「パートナー」もまた同じですが、呪いの村の場合は交互にならずに呪いの村そのものを連打しても問題なく、スターターが不要で、パートナーは馬商人(4)や物置(3)など手札を大きく減らすカードであっても、逆に1枚ドローをするものであっても構わないという点で、外交官よりもずっとコンボが成立しやすいと言えるでしょう。

後から追加された同時処理、の追加

hirotashi-domi.hatenablog.com

 

この記事を書いたあと、その関連で見つけた別の問題について。

 

forum.dominionstrategy.com

Innovation(6)購入済みのプレイヤーが、値切り屋(5)をプレイしたターンに属州を買い、値切り屋の効果でサプライからもう1枚の値切り屋を獲得した。

このときInnovationの効果によって即プレイした2枚目の値切り屋の効果によって、属州より安いカードをもう1枚獲得できるか?

 

 

これもやはり「後から追加された同時処理」であるわけですが、これもまたドナルドは"Yes"と回答しています。それだけなら前回と同じなんですが、その理由として以下を挙げています。

 

This goes back to Secret Chamber / Moat - I play Militia, you use Secret Chamber, you get Moat from it, you use the Moat on the Militia.

 

そう、我々はすでに、アタックカードを打たれたときに秘密の部屋(2)を公開→山札から2枚引くとその中に堀(2)がある→適当な2枚を山札の上に戻す→堀を公開してアタックを無効化→再び秘密の部屋を公開→山札を2枚引き、秘密の部屋と堀を山札の上に乗せて次のターンのアタックに備える、が可能であることを知っています*1。この「山札から引いた堀でリアクションする」こと自体が「後から追加された(アタックカードのプレイ時に対する)同時処理」にほかなりません。実はもうとっくに我々は、この問題の答えを知っていたんですね。

*1:知らない?

DOMINION OVERLORDの内容をご紹介

dominion-overlord.tumblr.com

 

 

こんな直前に書いてどれだけの方に読まれるかわかりませんが、いよいよ明日のコミックマーケットC96・南地区ネ-26aにて、ドミニオン戦術指南本"DOMINION OVERLORD"が頒布されます。よく考えたら自分が書いた記事の内容について触れていなかったので、改めて。

今回私ヒロタシは、いつものようにドミニオンクイズと、そしてドミニオン詰将棋にするイベント、寄付(8d)についての記事「寄付マニアックス」を9ページに渡って書いております。

 

http://wiki.dominionstrategy.com/images/thumb/4/42/Donate.jpg/320px-Donate.jpg

 

寄付はひとたび買うことでその後の展開がある程度固定されてしまうため、考えればその答えが出てしまうもです。まさにその答えについて、つまりは「サプライに寄付と○○があるとき、どう行動するのが最適か?」「相手も同じ行動を取るなら?」をズバリ書いてしまいました。この○○には、城(3-10)だったり、結婚式(4+3d)だったり、遠隔地(5)だったりが当てはまります。

ある意味寄付戦のネタバレとも言えるこの記事、DOMINION OVERLORDのために書き下ろしたものです。正直言って、確率計算と手順確立のための考察にとんでもない時間をかけました(!)。どうか読んでください。

すきよ すきよ Captain

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先日発表された新プロモカードのCaptain(6)について、さっそく世のドミプレイヤー達がその悪用の仕方を考察しているようです。では自分も。

 


以下思いついたことをダラ書きです。

 

  • 効果を雑に書くなら「2回作用するはみだし者(5)」。はみだし者とは違い持続カードは選べないが、サプライから枯れると選べなくなる点は同じ。
  • 木こり(3)や宰相(3)のような、2金出すアクションカードを2回選ぶだけでも商船(5の働きを、あるいは堀(2)のような2ドローカードを2回選べば船着場(5)のような働きになる。そのようなプランがなくともとりあえず打って、次のターンに手札を見てから決めてよいという点で強い。
  • 「場に出さずに("leaving it there")」とは、自身を動かす効果は得られないという意味。

・祝宴(4)や抑留(2)を選択しても廃棄されない。
・島(4)を選択しても島マットには移動しない。手札1枚は移動する。
・案内人(3)や遠隔地(5)などのリザーブカードを選択しても酒場マットには移動しない(そのためそのカードを獲得するわけではない)。

  • サプライから選ばれたアクションカードは、場には出ないがプレイはされる。工房(3)で自身を獲得することも、Lurker(2)で自身を廃棄することも可(また新たな「自己言及」)。これは上の「自身を動かさない」と矛盾しない。
  • サプライにあるアクションカードは「あなたのカード」ではないので、相続(7)を購入済みであっても屋敷は選択できない。またLanternを持っていてBorder Guard(2)を選択したとき、そのBorder Guardは「あなたの」ではないため、公開する枚数は2枚となる。
  • 「コスト4以下の」「持続でない」アクションカードの種類がサプライに少ないとき、Captainによる選択肢は狭くなる。さらにそれらの山が枯れていくに従ってさらに狭くなるため、持続している間に他家にサプライを枯らされてしまい再建(4)とせざるを得なかった、などの事故には注意。
  • 「自身を動かさない」ため、廃棄・酒場マットへの移動・サプライへの移動をしなくて済む。これにより、祝宴(4)として公領2枚獲得したり、死の荷車(4)として5金を得たり、VPトークンが4個乗っているときの農家の市場(3)として4VPを得たりできる。
  • そして話題の無限プレイについて。

サプライにはみだし者があり、渡し船(3)によりCaptainの上に-2金トークンを置き、さらに橋(4)などで全体のコストを1下げているとき、Captainのコストは3、はみだし者は4である。
このとき、Captainをプレイしてはみだし者を指定し、はみだし者の効果で再びCaptainを指定する、をいくらでも「往復」できる。往復した回数だけ次のターンにCaptainの効果を得るため、サプライに木こりがあれば無限金無限buyを得る。「往復」を終えるには別のカードを指定すればよいが、サプライに指定できるカードがなければこの「往復」を終えることができず、そのままゲームは永久に終わらなくなる。

 (追記:この無限プレイ、その後のルール改定(2019ルール)により、Captainではみだし者を指定することができなくなったため不可能となりました)

DOMINION OVERLORD 今週末のコミケで!

dominion-overlord.tumblr.com

 

なんとか入稿を終え、今週末の金曜日(8/9)のコミックマーケットC96・南地区ネ-26aにて頒布されることとなりました。内容たっぷりすぎです!いかがですか!よろしくお願いします!

ステドミに新プロモカード登場

 速報です。

 

かねてから噂になっていた新プロモカード、発売前にステドミに導入されていたのでご紹介。

 

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Church (ステドミでは「教会」)

コスト3 アクション 持続

 停泊所より次ターンに送れる枚数は多く、また次ターンに廃棄もできるカードです。打ったターンで3枚脇に置くと手札は残り1枚になりますが、そこから書庫(5)系を打ちたいですね。

 

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Captain (ステドミでは「船長」)

コスト6 アクション 持続

 持続するはみだし者(5)のよう。打ったターンよりも次のターンの方が強いですね。鍛冶屋(4)にするだけでも手札8枚スタートですし。

ターミナルシルバーがあるだけでも商船(5)くらいの働きはします。

 

(追記:その後のルール改定(2019ルール)により、Captainのテキストとカードタイプは変更されました。)

9枚での詰将棋

新拡張であるRenaissanceから追加されたProjectについて、毎日ひとつひとつ考えております。

 


さてそのひとつ、Cathedral(3)とはどんなProjectでしょうか。

 

http://wiki.dominionstrategy.com/images/thumb/c/c5/Cathedral.jpg/320px-Cathedral.jpg

Cathedral

Project コスト3

 

あなたのターンの開始時、手札を1枚廃棄する。

 

一度買ったら止めることはできず、手札のうちどれかを廃棄しなくてはなりません。民兵(4)のようなハンデスアタックが存在する場では危険ですが、そうでなければ高速にデッキを圧縮してくれるProjectです。

 

ためしに、これを1ターン目に買うとどうなるでしょう。第2ターンに屋敷を廃棄して銀貨を買うと、デッキ全体は1枚減って1枚増えるので10枚。以降毎ターン何かを買うお金プレイをすることを考えると、第8ターン終了時に屋屋屋銅銅銅銅の7枚を銀銀銀銀金金金の7枚と入れ替えることができ、以降は銅貨を廃棄しながら属州購入とすれば、12~13ターンで属州4枚の購入が可能となります。


しかし問題はこの後。金金銀属属の手札から銀貨を廃棄して公領を買うなどとしていると、デッキ内の金量はどんどんと減っていき、そのうちに銀貨を廃棄して銀貨を買うとか、金貨を廃棄して銅貨を買うなどする羽目になります。金金銀属属からは属州を廃棄して属州を購入とすれば、24点を持ったまま17~18ターン程度でゲームを終わらせられるでしょう。

 

 

さて。もうひとつ強力なProjectである、Star Chart(3)も買ってみるとどうなるでしょう。

 

http://wiki.dominionstrategy.com/images/thumb/0/07/Star_Chart.jpg/320px-Star_Chart.jpg

Star Chart

Projects コスト3


シャッフルするとき、そのうち1枚を一番上に置いてよい。

 

 

初手から、Cathedral-Star Chartと買うと、第2ターンで屋敷を廃棄し、この時点でデッキは銅銅銅銅銅銅銅屋屋の9枚。ここから毎ターン何かを買うとすればデッキはずっと9枚のままです。ここから手札を5枚引き、1枚廃棄・1枚購入して5枚を捨て札置き場に送り、再び手札5枚を引くとき、山札の4枚と、Star Chartの効果で捨て札置き場の5枚から好きな1枚を引くことができます。再び山札は4枚になり、これは次のクリンナップフェイズに引くだけなので4枚の間の順序は意味を持ちません。つまり以降はシャッフルをする意味がなくなり、ゲーム終了まで運による要素が排除された、完全情報系ゲームとなるのです。

この状況で属州4枚を買うことだけを考えると、おそらくは以下の方法が最速だと思われます。

 

ターン数 山札 手札(Star Chartで引いたカード) 廃棄 購入 捨て札
1 銅銅銅銅屋 銅銅銅屋屋 - Cathedral -
2 - 銅銅銅銅屋 屋敷 Star Chart 銅銅銅屋屋
3 銅銅銅銅 銅銅銅屋(屋) 屋敷 銀貨 -
4 銀銅銅銅 銅銅銅銅(屋) 屋敷 銀貨 -
5 銅銅銅銅 銀銅銅銅(銀) 銅貨 金貨 -
6 銀銀銅銅 銅銅銅銅(金) 銅貨 金貨 -
7 金金銅銅 銀銀銅銅(銅) 銅貨 金貨 -
8 金銀銅銅 金金銅銅(銀) 銅貨 属州 -
9 金銀銅属 金銀銅銅(金) 銅貨 属州 -
10 金銀銅属 金銀銅属(金) 銅貨 属州 -
11 金銀属属 金銀銅属(金) 銅貨 属州 -

 

 

第3ターンの手札は銅銅銅屋屋か銅銅銅銅屋のどちらかになりますが、いずれにせよ「屋敷を廃棄して銀貨購入」は可能です。ここからデッキは完全に2組に分割し、その間をStar Chartで選んだ1枚が行き来することになります。3枚目の金貨を買った後は、その2組に金銀が1枚ずつ含まれるようにして、もう1枚の金貨が行き来するようにすれば、毎ターン金金銀の8金が確定します。
そして11ターンを終えたところで、初期デッキの10枚はすべて廃棄され、ここからは毎ターン属州を廃棄して属州を買うのか、あるいはもう少し高得点を目指すなら、2組の役割を「財宝を廃棄して財宝購入」と「財宝を廃棄して属州購入」に分けることで属州をもう2枚買うことができます。

 

ターン数 山札 手札(Star Chartで引いたカード) 廃棄 購入 捨て札
12 金金銀属 金銀属属(属) 銀貨 銀貨 -
13 銀属属属 金金銀属(金) 銀貨 属州 -
14 金金金属 銀属属属(属) 銀貨 銅貨 -
15 属属属属 金金金属(銅) 銅貨 属州 -

 

これで36点。二人戦なら残り2枚の属州を相手が買ってくれればゲームが終わりますが、そうでなければこのあと自分で「属州廃棄して銅貨購入」と「銅貨廃棄して属州購入」を2周する必要があります。